SECTION 01
世界初の技術を実現し、
競合メーカーに打ち勝て。
「開発をやめるのなら、今しかないよ」
自動車メーカーとの打ち合わせの場で、本気とも冗談ともつかぬ言葉を投げかけられた。
住友理工が開発を中断したとしても、今ならまだ自動車メーカーとして別の手立てを講じる時間がある。しかしここから先の段階に入ったら、もう引き返すことはできない。世界戦略車の量産スケジュールに遅れが生じることなど、許されるはずがないからだ。
しかし、本当にスケジュールに間に合うのか。住友理工として初めて取り組む技術。量産化を控えたこの時点でもまだ、見通しは立っていなかった。「絶対に成功させます」という自信のある返事ができないまま、下條誠は打ち合わせ場所を後にした。