SECTION 01
新しいセンサーの開発。
それはゼロから始まった。
めざす場所は決まっている。そこに行かなくてはならない理由もある。ただ、目的地までのルートは、自分たちの力で見つけなくてはならない。未知の製品開発を行う難しさと、それをやり遂げる手応え。「ステアリングタッチセンサー」の開発に挑んだ、技術者たちの足跡を振り返っていきたい。
ステアリングタッチセンサーとは、自動車のステアリングに内蔵してドライバーの状態推定を行うためのセンサー。ステアリングを両手で握っているか、ステアリングのどの位置を握っているかなど、ドライバーの状態を検知できることが特徴だ。なぜ、こうしたセンサーが必要とされているのか。背景にあるのが、自動運転時のステアリング保持の義務化に伴う「UN-R79」という法規制である(ヨーロッパでは2019年、日本では2021年の新車から規制対象となる)。自動運転レベル2~3においては、一定の条件下での走行はシステムが自動的に行うが、それ以外の場面や緊急時には、ドライバー自身がステアリングを握る必要がある。そこで重要な役割を果たすのが、ドライバーの状態推定を行うシステム(Hands off Detection System)だ。ステアリングを握る状態やポジショニングを検出し、自動運転から手動運転への安全な切り替えをサポートする。
このステアリングタッチセンサーに内蔵されているのが、柔軟で電気を通すゴム材料で作られた、SR(スマートラバー)センサーである。健康介護向けの製品を中心に使用されてきた独自のセンサーを応用し、住友理工が新たなセンサーデバイスを開発。静電検出技術などを開発するアルプスパイン(株)とステアリングメーカーなどが連携し、オープンイノベーション開発が進められた。